取得した情報が不正に入手されたものだったら?

当社は出版社ですが、企画会社から持ち込まれた企画を採用し、出版計画を進めていたところ、A社から出版を差し止めるようクレームをつけられました。その企画は企画会社がA社から不正に入手したものとのことですが、当社の立場はどうなるのでしょうか。

不正取得行為
不正競争防止法2条1項4号は、窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為または不正取得行為により取得した営業秘密を使用しもしくは開示する行為を不正競争行為と位置付けています。具体的には、営業秘密そのものである有体物(新製品や触媒等)や営業秘密が化体されている有体物(顧客名簿や図面、設計図等)を窃取したり、詐欺、強迫により取得する行為や、営業秘密が保管されている場所に無断で侵入し、営業秘密の保管してある机・金庫、 フロッピーディスク等を無断で開けたり、使用して収められている営業秘密を閲覧、コピー、記憶する等の行為、さらには詐欺、強迫盗聴・電波傍受等の手段により、営業秘密の保有者から営業秘密を聞き出す行為等が不正取得行為の典型と考えられます。このようなスパイ的な情報の入手に対しては、営業秘密の存在形態およびその入手態様に応じて、刑法の財産犯規定(窃盗、業務上横領、背任、臓物)が適用される可能性も高いといえます。(営業秘密を他社に漏洩した場合の刑事上の責任については「社員が顧客情報を他社に漏洩したら?」参照。)。
悪意重過失取得者の行為
さらに、同項5号により、上述の不正取得行為が存在したことについて、知っているか(悪意)または重過失にょり知らずして、営業秘密を取得する行為またはその取得した営業秘密を使用、開示する行為も不正競争行為とされます。また、不正の競業その他の不正の利益を図る目的で、あるいは保有者に損害を与える目的で営業秘密を使用・開示する行為や法的な守 秘義務に反する開示があったことについて、悪意または重過失で営業秘密を取得する行為またはその取得した営業秘面を使用、開示する行為も不正競争防止法は不正競争行為としています。そして、不正競争防止法2条1項5号、8号に該当する行為によって営業秘密を取得した者には、直接の開示によって取得した者だけでなく、転々流通してきた営業秘密を取得した老も含まれると解されています。不正取得されたものであることに気付きつつも、プロ-カー等からライバル会社の営業秘密を取得する行為は悪意重過失の取得に該当しますが、その途中にたとえ善意無過失で秘密を取得した者が介在していたとしても私法上の法理とは異なり、不正競争防止法上は営業秘密の保有者や管理者の営業秘密に対する梅原は失われないのです。それゆえに、その後に営業秘密を取得した者が悪意重過失者であれば、その取得行為、取得後の使用・開示行為は不正競争行為となるのです。
事後的悪意重過失者の行為
さらに、同法2条1項6号、9号は、営業秘密取得後に、その営業秘密に不正取得や不正開示行為があったことに悪意または重過失となった者が、営業秘密を使用し、開示する行為をも不正競争行為と位置付けています。
取引による善意取得者の利用行為
しかし、善意無重過失で取引により営業秘密を取得してしまった場合で、事後的に悪意となった場合の使用行為までを不正鹿争行為として差止めの対象にしてしまうと、取引の安全が害されることがあります。それゆえに、不正競争防止法はその12条1項6号において、営業秘密を取引により取得した者が、その取得の際に当該営業秘密に係わる不正行為の存在に関して善意無重過失であった場合には例外的に、「その取引によって取得した権限の範囲内」においてその営業秘密を使用することを認めています。
悪意重過失取得の場合
ご質問のケースにおいては、企画会社から持ち込まれた企画を貴社がどのような状況で買い受けたかが重要な点であると思われます。企画会社が不正取得によって得たと思われる営業秘密を使って貴社が出版計画を進めているのであれば、既に述べたように、貴社自身は直接には産業スパイ的な行為をしていなくとも、不正取得を知りながら、当該営業秘密を使用したとして、その企画の使用差止めはもちろんのこと、損害賠償請求や出版企画、出版物の廃棄等の請求をされる可能性があります。
取得時に善意無重過失であった場合
しかしながら、貴社が企画会社から持ち込まれた企画を買い取る際それらの企画がA社から不正に取得されたものであることについて、善意無重過失であったのなら、その企画を買い取った際に決められた範囲内で当該企画を行うことが可能となる場合があります。

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