正社員が顧客情報を他社に漏洩したら?独自に作成したマニュアルが他社で使用されていたら?

当社の営業員が、友人に頼まれて、当社の顧客情報を無断でコピーして渡してしまい、これが同業他社に売却されたことがわかりました。当社は、この漏洩事件の関係者に対して、どのような措置をとることができるでしょうか。

営業秘密としての顧客情報
顧客情報も不正競争防止法上の3つの要件(?秘密管理性、?有用性、?非公知性)を満たす場合、すなわち、社員のうちその顧客情報を見ることができる者が制限されている場合や、社員に対して顧客情報について守秘義務を課している等の場合で、顧客の趣味、嗜好、資産状況等、公開された情報からは入手しがたい情報に的を絞った、事業活動上有用な情報であれば、営業秘密と考えることができます。
営業秘密漏洩に関する刑事上の責任
では次に、営業秘密に関する刑事上の規定を考えましょう。現在日本には営業秘密それ自体を保護する刑事上の規定は存在していません。しかし、現在までは刑法における財産犯規定(窃盗、業務上横領、背任、臓物)および共犯規定の適用によって保護が図られてきたといえます。 例えば、営業秘密を記録した媒体を部外者が不正に持ち出した場合には窃盗罪が成立するとされてきましたが、そこでは紙やフロッピーディスクという媒体自体の価値を超えた営業秘密自体の価値が財産的損害として窃盗罪の法益侵害の中に含まれていると考えられています。すなわち、営業秘密を他の秘密情報と区別する属性であるその財産的価値を根拠としてその侵害を捉え、財産犯の成立が認められてきました。従業員が営業秘密を他社に売却した場合に認められる刑事上の責任としては以下のような類型化が可能です。
従業員が占有、保管している書類や図面を持ち出した場合業務上占有する他人の物を横領したことになり、業務上横領罪が成立し、懲役10年以下の刑に処せられます。
従業員が占有、保管していない書類や図面を持ち出した場合他人の財物を窃取したことになり、窃盗罪が成立し、懲役10年以下の刑に処せられます。
有体物の持出しを伴わない営業秘密のみを持ち出した場合秘密保管義務のある者が持ち出した場合には、自己もしくは第三者の利益を図りまたは会社に損害を加える目的でその任務に違背する行為をして会社に財産的損害を負わせたことになり、背任罪が成立し懲役5年以下または50万円以下の罰金刑に処せられます。企業秘密の保管者以外が行った場合には、背任罪には当たりませんが、民事上の損害賠償や、就業規則等による懲成処分の対象となることがあります。
刑事上および民事上の責任を問う
ご質問のケースでは、貴社は事件の関係者に対し、刑事上および民事上の責任を問うことができるでしょう。
刑事上の責任
既に述べたように、貴社の営業員が顧客情報を自ら保管していたのであれば業務上横領罪が、他の部署において保管されていたものを勝手に持ち出したのであれば窃盗罪が成立する可能性があります。一方、営業員に持出しを依頼した友人の刑事責任は、営業員の責任に応じて、窃盗、業務上横領もしくは背任の教唆が成立するでしょう。そして、その顧客情報を買い受けた同業他社が、当該顧客情報が貴社の営業秘密であって、貴社の営業負およびその友人が違法に持ち出した情報であるということを知りながら買った場合には、臓物故買罪が成立するでしょう。
民事上の責任
当該顧客情報が不正競争防止法上の営業秘密に該当するのであれば、貴社は同法に基づいて、その営業員に対しては、その顧客情報の第三者(依頼した友人以外)への開示差止めや損害賠償を請求、さらには雇用契約上の責任を追及することが可能です。また持出しを依頼した友人に対しても、その情報の使用や第三者への開示差止め、損害賠僕請求が可能です。そして、顧客情報を買い受けた他社に対しては、同社がその情報が営業秘療であって、違法に入手されたものであるということを知っていたかもしくは少し注意すれば知り得たはずであった場合には、同様にその使用差止め、損害賠償請求が可能となります。同業他社故に、当該情報の重要性を知り得る立場にあり、また、顧客情報が貴社の用紙に記載されたものをコピーしたまま買ったというのであれば、同社の重過失の推定は容易でしょう。ただし、顧客情報に手が加えられる等して売り込まれていた場合には、同社の重過失の認定は難しいかもしれません。

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